バイクのオーバーホール専門店 内燃機加工、カスタム、サスペンションセッティング、バイク車検代行なら神奈川県藤沢市のガレージ湘南

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リアサスペンションのオイル漏れ

リアサスペンションの寿命と交換時期
リアサスペンションのオイル漏れは、「どこまでが大丈夫で、どうなったらまずいのか?」わかりづらいですよね。
たまに「オイル漏れしています」とお客さまに言われてみると、オイル漏れではなく、「オイル滲み(にじみ)」だったりします。
そこで具体的な事例を踏まえて、解説していきます。

当店代表 兼 お問い合わせ担当
日向正篤(ひゅうがまさあつ)
湘南工科大学卒。ロードレース国際A級ライダー。
MCFAJエキスパート500クラス 3年連続シリーズチャンピオン(1987年-1989年)。
ガレージ湘南を経営するかたわら、みずから製作したマシンで鈴鹿8時間耐久ロードレースに15年連続参戦(1983-1998年)。インドや韓国、公道レース マカオGP、全日本選手権、もて耐、SUGO6時間耐久レースなど、国内外のレースに出場。
かつてはオーリンズのプロショップ。オーリンズ製リアサスペンションのモディファイ(カスタム)を手がける。
2019年:
Verity(ベリティ)ブランドで知られる三和化成工業とフロントフォーク用オイルを共同開発。YSSサスペンションの開発・販売を開始。250本以上のYSSリアサスペンション販売実績を持つ(2024年12月時点)
2021年:
全日本ロードレース選手権 J-GP3 サニーモトプランニング 小室 旭選手(KTM RC250R)のテクニカルアドバイザーを務める。
※プロショップ:
サスペンションのセッティング、メンテナンス・オーバーホール、カスタムチューニングなど、ライダーのニーズや走行環境に合わせてサスペンションの性能を最適化する専門店。

間違いやすいリアサスのオイル漏れ

ハーレーダビッドソン

カワサキ ZRX1200S
リアサスペンションは大きく分けて2種類。
クラシックバイクや、デザイン面からネイキッド、アメリカン、スクーターなどに広く採用されているツインショック。
走行性能を追求したスーパースポーツモデルや、アドベンチャー、オフロード車に採用されているモノショックがあります。

ホンダ CBR650R

設計上、位置的に取り回しがむずかしいモノショック
1本タイプ、2本タイプともに、サスペンションにはさまざまな構造があり、日々、進歩しています。

リアサスペンションの断面図
リアサスペンションのダンパーの中には「ダンパーオイル」(黄色の部分)が入っています。
ダンパーとは「減衰装置」のことです。
内部の構造や、オイル粘度の抵抗をうまく利用して、ゆっくり動作する仕組みになっています。たとえば、玄関ドアにもダンパーが使われていて、急にドアが閉まらないようになっています。
ダンパーオイルが外に漏れないようにしている部品がオイルシール(密閉するの意)です。
ダンパーシャフト(ダンパーロッド)とシールは接しています。
そのため、新品のサスペンションであっても、動作すればダンパーシャフトにオイルが付着します。

新品走行後のリアサス

新品走行後のリアサス
いずれもYSSのリアサスを新品交換して、しばらく走行した後の写真です。
ダンパーシャフトに、うっすら跡があります。よく勘違いされがちですが、これはオイル漏れではありません。
ダンパーを組み込む際、オイルシール破損防止のためグリースが塗布されています。ダンパーが動作することによって熱が発生し、溶けたグリースが付着しているだけです。
使用上、とくに問題ありませんが、どうしても気になる場合は柔らかい布でふき取ってください。

3.6万km走行

ダンパーが抜けて、オイル漏れしています。
もしオイル漏れが発生すると、次々とオイルがたれてくるため、目視でわかるかと思います。
このような場合、すぐ使用を中止して、購入店にお問い合せください。
オイル漏れ3つの原因
シール劣化や内部パーツ摩耗により、オイルが漏れてきます。
理屈としてはフロントフォークのオイル漏れとおなじです。

フロントフォークの場合、飛び石などでインナーチューブに傷が入ったり、錆がオイルシールを傷つけると、オイル漏れが発生します。
リアサスペンションは、シールの劣化や、ダンパーシャフトの錆が原因で、オイル漏れが発生することがあります。

ダンパーシャフトは再メッキすることもできますが、それなりに費用がかかります。
新品でも漏れやすいシール
新品のリアサスペンションや、オーバーホールしたばかりでも、オイル漏れが発生する事があります。
「低フリクション」(低抵抗)のオイルシールを使用している場合です。
たとえば、純正サスペンションに多く採用されるショーワの場合、フリクションロスを多少、犠牲にしてでも、シール性を高めています。
オイル漏れ(クレームになる)を避けるためです。
いっぽうオーリンズなど、低フリクションシールは動作性能には優れるものの、シール性や耐久面で劣ります。
それでも、頻繁に分解整備をおこなう競技用車両なら問題ありません。
しかし、公道用バイクに低フリクションシールを使用した場合、メンテナンスサイクルが来る前にオイル漏れが発生することがあります。
メリットの裏返しがそのまま、デメリットになるわけです。
世界的に見て、とくに日本人はオイル漏れに関して、神経質な面があるため、YSSサスペンションはわざわざ日本仕様に変更して、製品をつくっています。(ほかの地域の仕様と異なる)
※オイルシールの考え方はフロントフォークも同様です。
オイル漏れを放置するとどうなる?
主な症状
・コーナリング中、車体がフワフワして挙動が不安定になる
・路面との接地感が弱く、コーナーリングで膨らんでしまう
・路面の凹凸や減速帯でバイクが跳ねてしまい、安心して走れない
・高速コーナーや高速道路の継ぎ目で車体がヨレる感じがする
・乗車時にシート高が下がりすぎる
・プリロード調整してもほとんど効果が感じられない
・・・などの現象が出てきます。
一般的に「リアサスが抜けた」「へたった」と言われる状態です。
とくに分かりやすいのが、凹凸が連続する路面を走行した場合です。


凹凸が連続する減速帯を走行すると、マシンがはね続けるため、リアサスの劣化状態を感じやすいです。
ダンパー機能が低下して、スプリングの「ボヨヨーン」という状態を抑えられないからです。
単発の路面の凹凸はなんとかやり過ごせても、減速帯のように連続すると、ダンパーがスプリングの動作を収束させる間もなく次の凹凸があるため、フワフワと落ち着かない状態になります。
走行不可能ではないものの、本来のコーナーリング性能、運動性能ではないため、状況によっては危険な場合があります。
(とくに高速道路)
その意味で、リアサスペンションの寿命、と言えるかと思います。
とくに中古車を購入した場合、サスペンションが劣化していても気づきにくいため、抜けていても「こんなものかな」と思って乗っている方が多いです。
バイクの運転技術や、初心者・ベテランなどのバイク歴と、「変化に気づくかどうか」の感覚はまったく別物です。
ベテランライダーの方でも、リアサスが抜けていても、まったく気づかない人もいます。
「うまく乗りこなせないのは自分の運転技術が原因」
と思っていたら実は、バイク側に問題があった(セッティングが合っていなかった)ということも多々、あります。
よくある誤解
1、バイクメーカー出荷時の状態が最適なセッティング
実際には、ライダーによって「なにが最適か」は異なります。メーカーが不特定多数に向けたセッティングが、あなたに合うとは限らないです。
たとえば欧州仕様車の場合、2人乗りで高速走行を想定したセッティングになっている場合があり、そのまま日本の公道を走行すると、硬すぎて乗りにくい事があります。
2、プリロード調整すれば硬くなる
リアサスが抜けた車両で多いのが、スプリングプリロード(イニシャル)が最強になっているケース。
ダンパーが抜ける → 柔らかすぎる → プリロードをかけて(締めて)硬くしよう
という発想でおこなっているのだと思われますが、ダンパー抜け=ダンパーオイル及び内部パーツの劣化ですから、いくら調整しても、解決になりません。
そもそも、プリロードは硬さを調整するための機能ではないため、物理的な硬さは変わりません。
ポイント:ダンパー抜けは、プリロード調整や、ダンパー調整で解決できない
ちなみに、抜けたフロントフォークでも、同じく「最強」になっていることがよくあります。効果がないだけならまだしも、状況によっては危険です。
メンテナンスが必要な場合

徐々にオイルが劣化すると、水のようにシャバシャバになって、粘度が柔らかくなる。

さらにオイルが劣化すると、ヘドロ状態になる。(KTM 300XC WP製リアサス 100時間使用後)

内部パーツは、ダンパーオイルを制御するオリフィスが塞がっている。

オイルや、内部パーツが劣化するのはメーカーや、製品価格を問わず共通。
以上のとおり、オイル漏れの有無に関係なく、リアサスペンションは消耗品です。
新品を100%だとすると、走行や経年劣化で少しずつ、ダンパーオイルや、内部パーツが劣化していきます。
ダンパーオイルが劣化すると、新しい時はねばり気のあったオイルが、水みたいに柔らかくなってきます。粘度が低下してくるわけです。粘度が低下すると、走行性能に影響が出ます。
エンジンオイルと同じで、ダンパーオイルも熱が加わると柔らかくなりますから、とくに夏場など、気温が高くなると、よりダンパーの動きが激しくなります。
「ストリート走行の場合、公道を走るなら10,000kmから20,000km」
「または2年に1度のオーバーホール or 交換が望ましい」
以上が、メーカーを問わず、フロントフォーク・リアサスペンションの一般的なメンテナンスサイクルです。
ただし、車種、使用環境、使用しているリアサスペンションによってかなり幅があるため、あくまで目安です。
実際には「サスペンションが本来の機能を果たしているかどうか?」で判断します。
まとめ
・リアサスのオイル漏れは、ダンパー劣化(リアサスオーバーホール or 交換)のシグナル
・オイル漏れがなくても、ダンパーオイルが劣化したり、内部部品の消耗によって、リアサスが抜ける(寿命)
劣化したサスペンションをリフレッシュすることで、次のような効果があります。
✓ 舗装の継ぎ目や減速帯など、凹凸路面を通過した際のフワフワ感が減る
✓ リアタイヤの接地感が感じられ、コーナーリング中、今までより安心してスロットルを開けることができる
✓ 高速コーナーでも踏ん張りが効くため安心して走る事ができる
✓ コーナーリングで狙ったラインが走れるようになり、曲がりやすくなる
✓ スムーズな走行が可能になり、長距離を走行しても疲れにくくなる
【比較】リアサス交換前と交換後の動作
オイル漏れの修理

分解したレーシングサスペンション
オイル漏れ修理や、メンテナンスする場合、オーバーホール(分解整備)となります。
ただし、純正・社外品を問わず、分解できるリアサスペンションと分解できないものがあります。
分解できないリアサスペンションは、原則としてオーバーホール不可です。
またオーバーホール可能な製品でも、サス本体の消耗が激しい場合、新品時の性能を取り戻すためには、かなり高額な費用が発生します。
バラバラに分解して、洗浄したり、消耗した部品を交換して、組み立てるからです。
(古い製品だと、メーカーに部品がない場合もあります)
以上の理由から、安い金額でオーバーホールすると、本来の性能が戻らないばかりか、すぐオイル漏れが発生する事があります。
旧車など、設計の古いサスペンションをお金をかけてオーバーホールするのであれば、現代の社外品に交換するほうがリーズナブルで現実的です。
(費用的にリプレイス品(社外品)と変わらない金額か、リプレイス品を購入したほうが安い場合があります)
性能面においても、30年、40年前のサスペンションと、最新技術で設計された現代のサスペンションとでは、比較にならない差があります。
30年以上前のバイクと、現行バイクの性能差を考えれば、想像がつくと思います。
メリットとデメリット
「オーバーホールできるリアサスのほうがいい」
と思われがちですが、実際にはそれぞれにデメリットとメリットの両方があります。
オーバーホール可能なリアサス
■メリット
・オーバーホール(分解整備)可能
・定期的にオーバーホールし続ければ、継続的に使用できる
■デメリット
・分解不可な製品と比較して、購入価格が高い(製作コストが高い)
・オーバーホール費用がかかる
・オーバーホールしている間、バイクに乗れない
・オーバーホールしたからといって、かならずしも100%新品時の性能になるとは限らない(痛みが激しい場合、性能を取り戻すためには高額な費用が発生する)
・設計が古いサスペンションの場合、オーバーホールしても、社外品現行モデルと比較して性能は劣る
分解できないリアサス
■メリット
・分解可能な製品と比較して、購入しやすい価格(製作コストが安い)
・サスが消耗した場合、本体ごと交換になるため、待ち時間なしでバイクに乗れる
・新品交換すれば100%の性能になる(アップデートされた製品が使用できる)
■デメリット
・オーバーホール不可
・サスが消耗した場合、本体ごと買い換えが必要
リアサスペンションの手入れ方法

リアサスの手入れ
日常でのメンテナンスとしては、ダンパーロッドに泥など、汚れが付いた場合は水で洗い流すことです。
(フロントフォークの場合、インナーチューブの汚れを乾いたウエスなどで拭き取る)
リアサスペンションの場合、形状的に拭き取りにくいものもあるため、できれば洗浄後、エアーダスタースプレーなどで水を飛ばしておくと良いでしょう。
できるだけゴミや、ホコリが付着しない状態にすることで、長持ちしやすくなります。
また前出のとおり、オーバーホール可能なサスペンションについては、メンテナンスサイクルを守ることで結果として、オーバーホール費用が抑えられます。
避けたほうがいいこと
パーツクリーナー(ブレーキクリーナー)を使ってダンパーロッドを洗浄すると、かえって部品を痛めてしまうおそれがあります。
またダンパーロッドに潤滑剤などを吹き付けると、ホコリや、ゴミが付着しやすくなるため、使用は避けたほうが無難です。