バイクのエンジンオーバーホール専門店 内燃機加工、カスタム、バイク車検代行なら神奈川県藤沢市のガレージ湘南
作業の予約・ご相談はメールでお願いします。電話は作業中または予約済みのお客さまのみとなります。
お問い合わせいただいた時点でホームページの記載内容に同意したものと見なします。
バイクエンジンオーバーホール専門店
安心の保証付き ガレージ湘南のこだわり
バイクエンジンオーバーホール専門店 ガレージ湘南がおこなっているオーバーホールの作業内容と、料金の仕組み、オーバーホールの時期について、くわしく解説しています。
代表の日向は、ヨシムラジャパンの創業者 ポップ吉村氏から直接エンジンチューニングを学び、バイクだけで1,080基(※2020年12月31日時点)を超えるエンジンオーバーホールを手がけてきました。
全てを覚えていませんので、作業実績の一部を紹介します。
■4ストローク
KAWASAKI
Z1/Z2、Z1000R、GPz1100/GPz750F、GPZ900R/GPZ400R、ZZR-1100、ZRX1100/ZRX400、ゼファー1100/ゼファー750/ゼファー400、Z750FX/Z550FX/Z400FX、Z550GP、ZXR250、Ninja 250SL(レース用)、ZX-10R、ZX-10、W1/W3
HONDA
CB1100R、CB900F、CB750F RC04、CB750 RC42、ドリームCB750Four、ドリームCB400FOUR、CB400FOUR(NC36)、CB400SF、CB1300SF、CB400T(ホークⅡ)、CBX、CBX400F/CBX550F、CBX250、CB125T(逆輸入車含む)、CB223S、CB250RS-Z
CBR1000RR、CBR600RR/CBR600F、CBR400F、CBR400R(NC23)/CBR400RR(NC29)、CBR250RR(MC22)
VFR750R(RC30)、RVF750(RC45)、 VTR1000F、VTR250、XR250、GROM、ドリーム50、ジャイロキャノピー・ジャイロX(エンジン持ち込みに限る)
YAMAHA
XJ750E/XJ400、XJR400、XJR400R、FZ750、FZR1000/FZR750/FZR400、WR250
SUZUKI
GSX-R1100/GSX-R1000/GSX-R750(油冷含む)/GSX-R400/GSX-R250、GS1000/GS750/GS400、GSX1100Sカタナ/GSX1000Sカタナ/GSX400Sカタナ、GSX400Fインパルス、GSX400FW、GSX400E、ジェベル
その他
BMW K1、ドカティ900SS、S4R、ハーレーFLH、スポーツスター1200、トライアンフ、ジレラ、KTM
■2ストローク
KSR80、KDX125、SS・KH250/350/400/750、NS400R、MVX250F、NSR250R、NS-1、CRM、RD250、RZV500R、RZ350/RZ250、TZR250、ランツァ、DT125、ウルフ250/125、TS125、GT750/GT380、RG500Γ、RGV250Γ、アプリリアRS250、TZ250、ホンダRS250
お客さま:神奈川県(藤沢市、茅ヶ崎市、横須賀市、横浜市、鎌倉市、三浦市、逗子市、小田原市、秦野市、大和市、相模原市ほか)、東京都(品川区、世田谷区、渋谷区、江戸川区、八王子市、多摩市、西東京市、町田市ほか)、群馬県、埼玉県(所沢市、川越市)、千葉県、静岡県、山梨県、長野県、愛知県、茨城県、福島県、鳥取県、熊本県、岐阜県、滋賀県、京都府、沖縄県ほか
関東を中心に、全国各地からご依頼いただいています。
本記事の目次
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エンジンオーバーホールバーチャル見学会
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■5、シリンダーヘッド
5-1:バルブガイド交換
5-2:シリンダーヘッド面研
5-3:バルブシート・バルブの修正
5-4:バルブすり合わせ
5-5:バルブタイミング
バルブタイミングの重要性
エンジンオーバーホール料金の内訳
作業工賃+部品代が基本です。
交換が必要な部品が高額だったり、交換する部品の数が増えるほど、部品代は高くなります。
工賃は、作業に時間がかかるほど、高くなります。フルカウル車の場合、カウルの脱着があるためその分、工賃は高くなります。
※部品の有無や、価格はメーカーの都合により常時、変動しています(基本は値上がり傾向)
料金の考え方と誤解
よく誤解されがちですが、「排気量が小さい=OH料金が安い」ではありません。
同じ4ストローク4気筒4バルブエンジンなら、400ccでも750ccでも、エンジンOHの工程は同じだからです。
(2ストロークも考え方は同様です)
単気筒エンジンも同じで、50ccでも250ccでも、エンジンOHの作業自体は同じです。(部品代は排気量が大きいほど高い傾向があります)
■2ストと4スト
2ストと4ストを比較した場合、部品点数が多く、より複雑な構造の4ストロークエンジンのほうが工賃・部品代は高くなります。
■シリンダー数
単気筒、2気筒、3気筒、4気筒、6気筒を比較した場合、シリンダーの数が多いほど工賃・部品代は高くなります。(2スト・4スト共通)
また鋳造ピストンと鍛造ピストンを比較した場合、鍛造ピストンのほうが部品代が高額になります。
■シリンダーのレイアウト
クランクケースとシリンダーが一対になっているエンジンは、腰上のみ分解することは出来ないため、全分解が必要になります。
V型エンジン(VT250シリーズ、VTR250、VFR、RVFなど)、GSX-R、CBR1000RR、ZX-10Rなど
(同じV型エンジンでもスズキのSVシリーズなど、シリンダーとクランクケースが別になっているエンジンもあります)
以上に該当する場合、並列エンジンと比較して工賃が高くなります。
■バルブの数
4ストロークエンジンの場合、バルブの数が増えるほど工賃・部品代は高くなります。
例:4ストロークの四気筒
5バルブエンジン=20バルブ
4バルブエンジン=16バルブ
2バルブエンジン=8バルブ
6気筒の '78-'82 CBX(1000)の場合、4バルブ×6で、24バルブになるため部品代・工賃が割高になります。
GSX-RやCBR、ZX-10R、WR250など、チタンバルブが採用されている車両や、鍛造ピストンが採用されている車種は通常より部品代が高額になります。
またCBX400FやCBR400Fなど、部品点数が多く複雑な構造のエンジンは比較的、OH費用が高くなります。
以上のほか、新車と旧車(絶版車)では、作業にかかる時間や労力は、比較にならないほど差があります。
(理由は続きを読み進めていただくと、お分かりいただけると思います)
オーバーホール時期と走行距離
走行距離は、あくまで一つの目安です。
同じ年齢の人でも、それぞれ健康状態が異なるように、同じ車種でも、エンジンの状態はそれぞれ違います。
エンジンオーバーホールをご依頼いただくバイクは、走行距離20,000km(実走行)に満たないケースはザラです。
>> 比較してみました「1.9万km VS 8.5万km」
<ご依頼いただくケース>
・エンジンがかからない場合や異音がする、オイル漏れが激しいなど(走行不可、または走行が困難)
・大きな不具合はないが、部品が手に入るうちにリフレッシュしておきたい
・予備のエンジンをオーバーホールしてほしい
このように「何キロkmだからエンジンをオーバーホールする」というより、修理しなければ走行できない状態になるか、「安心して長く愛車に乗り続けたい」というオーナー様が、依頼してくださいます。
(注 2ストロークの場合、約20,000km毎がエンジンOHの目安です)
エンジンの状態によって、オーバーホール費用はおおきく変わってきます。
1,エンジンがかかる
2,エンジンはかかるが異音がする
3,エンジン不動
それぞれ比較した場合、一般的に不動エンジンや、異音のあるエンジンはオーバーホール費用が高くなります。
エンジンの焼きつきなど、エンジン等に大きなダメージがあればその分、部品代や加工費用(ボーリングなど)がかさむからです。当然、修理にも時間がかかります。
よく「エンジンオーバーホールの正確な料金はいくらですか?」とお問い合わせをいただきますが、「エンジンを分解してみないとわからない」という回答になります。
そっけない回答ですみません。
メールや電話で、お客さまからの情報だけでは、あくまで推測しか出来ないからです。
実際、バイクをお預かりして見てみると、お客さまが認識されていることと全然、ちがう箇所に不具合があったり、他にいくつも不具合を発見する、という事がよくあります。
これは修理全般に言えることです。
分解して、実際に目で見て、はじめてエンジンの状態を正確に知る事ができます。
<古いバイク・個人売買で購入したバイクでよくある事例>
年々、インターネットオークションなど「個人売買で安く購入したバイクを修理したら、あちこちに不具合が見つかって結局、ショップで買うより高くついた」というケースが増えています。
当店でも、当初はエンジンオーバーホールのご依頼が、いざ作業に着手すると、エンジン以外(とくに電装系)の不具合を発見することが多々、あります。
修理しないとエンジンのオーバーホールが完了できませんので別途、修理費用(部品代+工賃)が発生します。
一般的に相場より安く販売されている車両は、それなりの理由があると考えておいた方がいいでしょう。
目的によって変わる費用
ひとくちにエンジンのオーバーホールと言っても、お客さまによって、目的はさまざまです。
1)「スタッドボルトやドレンボルトを破損してしまったので直してほしい」
2)「調子の悪いエンジン、動かなくなったエンジンをリフレッシュさせて愛車に長く乗り続けたい」
3)レストアに近い内容を依頼されるお客さま
当店で一番多いのは3のお客さまです。
レストア
元の状態に戻すこと。復元すること。特に、古くなって傷んだ自動車や家具などを修復すること。「古い家具のレストア」
車両を復元すること。原型に忠実に行うが、レプリカや複製品とは違い、欠品の部品は手作りで製作する。
(Weblio辞書より)
「新品部品が手に入るうちに、総取っ替えしてほしい」「せっかくだからエンジン以外もリフレッシュしたい」といった、レストアに近いご依頼です。
一例:
フロントフォークの再メッキやオーバーホール、リアサスペンション交換、足回りのオーバーホール、ウオタニSP装着、塗装、ベアリング交換などのメンテナンスほか
以上のように、お客さまの目的・エンジン(バイク)の状態・ご予算によって、エンジンOH料金や、トータルの料金が変わってきます。
お金をかけようと思えば、いくらでもかけられますし、逆に予算をおさえたいと思っていても、お客さまが考えていた以上にエンジンが損傷していたり、ほかの箇所に不具合があって、高くつく事もあります。
「自分のバイクに、いくらまでなら予算が出せるのか?」
不測の事態を考慮しつつ、お客さまご自身で上限をある程度、考えていただくことが先決かと思います。
その上で
「予算上限いくらでエンジン(もしくは車体)をオーバーホールしたいのですが、可能ですか?」
問い合わせていただくと、当店としては、回答しやすくなります。
ご予算の範囲内で現実的に可能なこと、不可能なことが明確になるからです。
当店の考え
「どうせエンジンをオーバーホールするなら、しっかりエンジンに予算をかけたほうがいい」
その理由はタンク・カウル・ホイルなど、外装は後からどうにでもできるからです。
しかしエンジンの場合、そう何度も降ろしたり、分解・組み立てするのは現実的ではありませんし、あとになって部品交換しようにも、部品が廃番になっていた、という事がごく当たり前のように発生します。
長く乗り続けたい、走り続けたい場合、必然的に優先順位が高くなるのはエンジンかと思います。
エンジンOHで失敗しない方法
料金だけに意識が向きがちですが、
「エンジンのオーバーホールは、どこでやっても同じ」
ではありません。
外科の手術も、ドクターによって技術の差がありますね。エンジンのオーバーホールも同じです。
・具体的にどのような作業をするのか
・どこまでやるのか
・誰がやるのか(どのようにやるのか)
「オーバーホール」と一口に言いますが、作業の中身はショップによってさまざまです。
分解して、部品交換して、ただ組み直すだけなのか、あるいは面研、バルブガイド交換、バルブ擦り合わせなどをおこない、しっかり精度を出した上でエンジンを組むのか。
作業内容や、組む人によって完成したエンジンのクオリティは違ってきます。
(レーサーなど一部の特殊車両を除いて、新車もただ部品を組んであるだけの状態です)
オーバーホール料金が高ければ、クオリティも高いとは限らないのが実情ですし、あまりに安すぎる場合、どこかで無理をしなければ店側は採算が合いません。
(なにかあった場合、後々、困るのはお客さまご自身です)
お客さまにおかれましては、料金だけではなく、オーバーホールの中身を吟味された上で、比較検討されるのがよろしいかと思います。
当店では、レーサーエンジンを組むのと同じクオリティで作業を行っています。
どの部品を交換したのか、お客さまがわかるようにしています。
精度向上と業務効率化のため、スイス製のバルブシートリフェーサーを導入しました(2022年6月)
エンジンオーバーホール
バーチャル見学会TM
エンジン分解・組み立て、納車までの全行程
当店でおこなっているエンジンオーバーホールの基本工程を、オンライン上で見て頂けるようにしました。
ボリュームがありますので、お気に入りの飲み物を用意して、ゆっくりご覧いただければと思います。
(本ページをブックマーク登録(お気に入り登録)していただくと便利です)
※PCでの閲覧推奨
■1、エンジンの取り外し
エンジンを降ろすために、エンジンオイルの抜き取り、ガソリンタンク、キャブレター(インジェクションの車の場合スロットルボディ)、エキゾーストマフラー等を取り外します
GPz1100(空冷4サイクルDOHC2バルブ並列4気筒 1089cc)
CB750F(RC04 空冷4サイクルDOHC4バルブ並列4気筒 748cc)
ZX-10R(水冷4サイクルDOHC4バルブ並列4気筒 998cc)
カウル付きの場合はカウルの取り外し、水冷の場合、クーラント(冷却水)の抜き取りと、ラジエターの取り外しをおこないます。
固着との闘い
「ただ部品を取り外すだけ・・・」に思えるかもしれませんが、古いバイクや、長期不動車はボルトが錆びて、固着していることがほとんどです。
なかには緩めていく途中でボルトが折れることもありますし、ネジの場合、ネジの頭が錆びて、潰れていることもあります。
しかし、どんな場合でも、外さないとエンジンがオーバーホールできません。
なんとかして取り外して、代わりのネジやボルトを用意したり、ねじ山がつぶれた場合、修復します。
旧車だと1台のバイクでこれが何十本とあるわけです。新車みたいに固着や錆びがなく、スムーズに取り外しができればいいですが旧車の場合、ほぼ、そういったケースはありません。
よくある事例
・本来、あるはずのボルトやネジがついてない
・ネジやボルトが緩んでいる
→新車・旧車にかぎらず、ボルトの緩みは点検が必要です。ただし、締めすぎに注意してください。
■2、エンジン分解
車体からエンジンを取り外したら、分解作業に入ります。
CB750F(RC04)のエンジン分解の様子をご覧ください。ヘッドカバーを外した状態からスタートです。
エンジン各部位の名称(黄色のラインは合わせ面)
カムシャフトと、カムチェーンを外し、シリンダーヘッドを取り外します。
シリンダーを外すと、ピストンが見えてきます。続いて、ピストンを取り外します。
(ご覧のようにCB750Fのエンジンは構造上、砂がたまります)
ここまでが、いわゆる「腰上」と呼ばれる部分の分解です。次は腰下、クランクケースの分解です。
クラッチを取り外します。
クラッチハウジング
クラッチハウジング脱着後
クランクケース内部
トランスミッション
トランスミッション
ギア抜けが発生していたトランスミッション(GSX-R1000)
クランクケース内部には、トランスミッション(ギアチェンジするための歯車)や、クランクシャフトなどがあります。自転車に例えると、ペダルをこいでる脚がピストン、ペダルの付け根(こぐと回転する軸の部分)がクランクシャフトにあたります。
エンジンの動力をチェーンでタイヤに伝えるのも、自転車とよく似ています。
トランスミッションのギア抜けは、赤い矢印の箇所が欠けていたり、摩耗して角が丸くなると、噛み合ったときに滑ってしまい、ギア抜けが発生します。
旧車の場合、ほとんど純正部品が手に入らないため、WPC処理を希望される方が増えています。
CBX400Fや、GPZ900Rなど、トランスミッションにWPC処理を施工したマシンを代表 日向がテスト走行していますが、「体感できるレベルでシフトタッチが良くなる」と感想を述べています。
CB750F RC04のオイルパン(エンジン下のオイルが溜まるところ)のフィルター
クランクシャフトが焼き付いたZX-10Rのオイルパン。
見た事もないゲル状の物質が、オイルフィルターを詰まらせていました。(原因はブログで)
CB750F(RC04)のフィルターにある、うす茶色のゴミのようなものは、液体ガスケットです。
液体ガスケットは、クランクケースとシリンダー、シリンダーとシリンダーヘッドなど、エンジンの合わせ面に使用する接着剤のようなものです。
必要以上に液体ガスケットを使用した場合、オイルフィルターを詰まらせたり、オイルライン(オイルの通り道)を塞いでしまうおそれがあります。
最悪の場合、エンジンオイルの潤滑不良を招いて、クランクシャフトが焼き付きます。
(走行中なら大きな事故になりかねません)
そのため、当店では液体ガスケットの使用を必要最小限に留めています。
CB750F(RC04)の純正ピストン
じつはボアアップ車だった
エンジンを分解すると、オーバーサイズピストンが使用(ボアアップ)されている事があります。オーナーさまもご存じなく(購入時に知らなかった)、この時、初めて発覚することがよくあります。
もし、オーバーサイズピストンが手に入らず、シリンダーをボーリングできない場合、シリンダーライナーを製作・打ち換えて、標準サイズの純正ピストンを使用する(ボアを元の大きさに戻す)といった手段を選ぶオーナーさんが多いです。
ボアアップされているエンジンのボアを、さらに大きくする(排気量をUPする)と、エンジンの耐久性が低下するためです。
※シリンダーのボーリングや、ライナー製作・打ち替えをおこなう場合、通常より納期がかかります。
ピストンの話
ピストンの周囲に付いてる輪っかのような部品をピストンリングと言います。
GSX400Fのピストン
CB750Fのシリンダーヘッド
ピストンリングにはそれぞれ役目があります。
トップリングの役目は、燃焼室で発生したガスが、ピストンとシリンダーの隙間からクランクケースに吹き抜けないようにすること。
抜けてしまうと、パワーが落ちるからです。
セカンドリングはトップリングのサポートするためにあります。
オイルリングは、シリンダーの壁についたオイルをかき落とすのが役目。オイルリングがへたってくると、かき切れなくなったオイルが、燃焼室に入ってしまいます。
すると、オイルが燃焼室で燃えてしまい、マフラーから白煙を吹くようになります。
つまりピストンリングは、シリンダーの壁と密着することで、役目を果たしているわけです。
オーバーホールするのであればピストンリングと、できればピストンも交換したほうが無難です。見た目は問題なさそうに見えても長期間、高熱にさらされることによって、ピストンが歪(ひず)んでいる事があるからです。
ただ絶版車の場合、純正ピストンや、社外ピストンが手に入らない事があります。
再利用が可能なら既存のピストンを使用しますが、その場合でも、ピストンリングは新品への交換をお勧めします。
この時、ピストンとピストンリングは、同じ製品で揃えるようにしてください。
ピストンリングとピストンは、2つセットで使用することを前提に設計されています。
同じ車種用の製品でも、異なるメーカーのピストンと、ピストンリングを組み合わせると、サイズや材質の違いから、エンジントラブルの元になります。
参考情報:よくあるご質問
純正部品が廃番になっていたり、部品が入手できない時は、WPC処理や、DLC(ダイヤモンド・ライク・カーボンコーティング)などの表面処理をおこなって、部品を再利用することがあります。
WPC処理は、「部品の疲労強度UP(1.2倍から3倍ほど)」、「フリクション低減による潤滑性能の向上」、「部品摩擦の低減」、「焼き付きの抑制」といった効果があると言われています。
これらの技術はF-1や、MotoGPなどレースで使用されているほか、市販車CBR1000RR-Rにも採用されています。
当店では、さまざまな表面処理加工を扱っている実績豊富な企業様と取引させていただいております。
トランスミッションでお伝えしたとおり、適材適所で表面処理をおこなうことで、エンジンノイズの静粛性が高まり、エンジンフィーリングが良くなります。
鍛造ピストンの注意点
走行距離を重ねた鍛造ピストンを再利用すると、割れる危険性があります。
見た目には再利用できそうでも、ピストンに歪(ひず)みが発生している事があるからです。
よくヨシムラのオヤジさん(ポップ吉村氏)に「一度、使った鍛造ピストンは再利用するな」と注意されたものです。実際、ヨシムラが再利用して組んだレース用エンジンの鍛造ピストンは割れていました。
以上の経験から、当店ではエンジンをオーバーホールする際、基本的に鍛造ピストンは再利用せず、交換をお奨めしています。
ガスケット・シール類
シールやガスケット類は原則、新品交換です。
縮んだり、膨張したシールを再利用すると、オイル漏れや、水漏れ(水冷)の原因になります。
シリンダーガスケットの製作
水冷の絶版車・旧車は、ラジエーターホースなどの経年劣化により、クーラントが漏れることがあります。
ホース類がプラスチックみたいに固くなることで、ひび割れが発生しやすくなり、そこから水漏れします。
そこまで固くない場合でも、一度ホースを外して再度取り付けると、隙間が発生するため、クーラントが漏れることがあります。交換して間もない場合を除いて、シール類やホースは交換をお勧めします。
エンジンを分解する際も、やはり固着ボルトとの闘いは続きます。
ひととおりエンジンの分解が終わると、エンジンの状態が把握できますので、どの部品の交換が必要か、だいたいの見当が付きます。(のちほど測定する時に、正確にわかります)