バイクエンジンオーバーホール専門店
安心の保証付き ガレージ湘南のこだわり
バイクエンジンオーバーホール専門店 ガレージ湘南がおこなっているオーバーホールの作業内容と、料金の仕組み、オーバーホールの時期について、くわしく解説しています。
代表の日向は、ヨシムラジャパンの創業者 ポップ吉村氏から直接エンジンチューニングを学び、バイクだけで1,080基(※2020年12月31日時点)を超えるエンジンオーバーホールを手がけてきました。
全てを覚えていませんので、作業実績の一部を紹介します。
■4ストローク
KAWASAKI
Z1/Z2、Z1000R、GPz1100/GPz750F、GPZ900R/GPZ400R、ZZR-1100、ZRX1100/ZRX400、ゼファー1100/ゼファー750/ゼファー400、Z750FX/Z550FX/Z400FX、Z550GP、ZXR250、Ninja 250SL(レース用)、ZX-10R、ZX-10、W1/W3
HONDA
CB1100R、CB900F、CB750F RC04、CB750 RC42、ドリームCB750Four、ドリームCB400FOUR、CB400FOUR(NC36)、CB400SF、CB1300SF、CB400T(ホークⅡ)、CBX、CBX400F/CBX550F、CBX250、CB125T、CB125T逆輸入車、CB223S、CB250RS-Z
CBR1000RR、CBR600RR/CBR600F、CBR400F、CBR400R(NC23)/CBR400RR(NC29)、CBR250RR(MC22)
VFR750R(RC30)、RVF750(RC45)、 VTR1000F、VTR250、XR250、GROM、ドリーム50、ジャイロキャノピー・ジャイロX(エンジン持ち込みに限る)
YAMAHA
XJ750E/XJ400、XJR400、XJR400R、FZ750、FZR1000/FZR750/FZR400、WR250
SUZUKI
GSX-R1100/GSX-R1000/GSX-R750(油冷含む)/GSX-R400/GSX-R250、GS1000/GS750/GS400、GSX1100Sカタナ/GSX1000Sカタナ/GSX400Sカタナ、GSX400Fインパルス、GSX400FW、GSX400E、ジェベル
その他
BMW K1、ドカティ900SS、S4R、ハーレーFLH、スポーツスター1200、トライアンフ、ジレラ、KTM
■2ストローク
KSR80、KDX125、SS・KH250/350/400/750、NS400R、MVX250F、NSR250R、NS-1、CRM、RD250、RZV500R、RZ350/RZ250、TZR250、ランツァ、DT125、ウルフ250/125、TS125、GT750/GT380、RG500Γ、RGV250Γ、アプリリアRS250、TZ250、ホンダRS250
お客さま:神奈川県(藤沢市、茅ヶ崎市、横須賀市、横浜市、鎌倉市、三浦市、逗子市、小田原市、秦野市、大和市、相模原市ほか)、東京都(品川区、世田谷区、渋谷区、江戸川区、八王子市、多摩市、西東京市、町田市ほか)、群馬県、埼玉県(所沢市、川越市)、千葉県、静岡県、山梨県、愛知県、茨城県、福島県、鳥取県、熊本県、岐阜県、滋賀県、沖縄県ほか
関東を中心に、全国各地からご依頼いただいています。
本記事の目次
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エンジンオーバーホールバーチャル見学会
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■5、シリンダーヘッド
5-1:バルブガイド交換
5-2:シリンダーヘッド面研
5-3:バルブシート・バルブの修正
5-4:バルブすり合わせ
5-5:バルブタイミング
バルブタイミングの重要性
エンジンオーバーホール料金の内訳
作業工賃+部品代が基本です。
交換が必要な部品が高額だったり、交換する部品の数が増えるほど、部品代は高くなります。
工賃は、作業に時間がかかるほど、高くなります。フルカウル車の場合、カウルの脱着があるためその分、工賃は高くなります。
※部品の有無や、価格はメーカーの都合により常時、変動しています(基本は値上がり傾向)
料金の考え方と誤解
よく誤解されがちですが、「排気量が小さい=OH料金が安い」ではありません。
同じ4ストローク4気筒4バルブエンジンなら、400ccでも750ccでも、エンジンOHの工程は同じだからです。
(2ストロークも考え方は同様です)
単気筒エンジンも同じで、50ccでも250ccでも、エンジンOHの作業自体は同じです。(部品代は排気量が大きいほど高い傾向があります)
■2ストと4スト
2ストと4ストを比較した場合、部品点数が多く、より複雑な構造の4ストロークエンジンのほうが工賃・部品代は高くなります。
■シリンダー数
単気筒、2気筒、3気筒、4気筒を比較した場合、シリンダーの数が多いほど工賃・部品代は高くなります。(2スト・4スト共通)
また鋳造ピストンと鍛造ピストンを比較した場合、鍛造ピストンのほうが部品代が高額になります。
■シリンダーのレイアウト
クランクケースとシリンダーが一対になっているエンジンは、腰上のみ分解することは出来ないため、全分解が必要になります。
V型エンジン(VT250シリーズ、VTR250、VFR、RVFなど)、GSX-R、CBR1000RR、ZX-10Rなど
(同じV型エンジンでもスズキのSVシリーズなど、シリンダーとクランクケースが別になっているエンジンもあります)
以上に該当する場合、並列エンジンと比較して工賃が高くなります。
■バルブの数
4ストロークエンジンの場合、バルブの数が増えるほど工賃・部品代は高くなります。
例:4ストロークの四気筒
5バルブエンジン=20バルブ
4バルブエンジン=16バルブ
2バルブエンジン=8バルブ
GSX-RやCBR、ZX-10R、WR250など、チタンバルブが採用されている車両や、鍛造ピストンが採用されている車種は通常より部品代が高額になります。
またCBX400FやCBR400Fなど、部品点数が多く複雑な構造のエンジンは比較的、OH費用が高くなります。
以上のほか、新車と旧車(絶版車)では、作業にかかる時間や労力は、比較にならないほど差があります。
(理由は続きを読み進めていただくと、お分かりいただけると思います)
オーバーホール時期と走行距離
走行距離は、あくまで一つの目安です。
同じ年齢の人でも、それぞれ健康状態が異なるように、同じ車種でも、エンジンの状態はそれぞれ違います。
エンジンオーバーホールをご依頼いただくバイクは、走行距離20,000km(実走行)に満たないケースはザラです。
>> 比較してみました「1.9万km VS 8.5万km」
<ご依頼いただくケース>
・エンジンがかからない場合や異音がする、オイル漏れが激しいなど(走行不可、または走行が困難)
・大きな不具合はないが、部品が手に入るうちにリフレッシュしておきたい
・予備のエンジンをオーバーホールしてほしい
このように「何キロkmだからエンジンをオーバーホールする」というより、修理しなければ走行できない状態になるか、「安心して長く愛車に乗り続けたい」というオーナー様が、依頼してくださいます。
(注 2ストロークの場合、約20,000km毎がエンジンOHの目安です)
エンジンの状態によって、オーバーホール費用はおおきく変わってきます。
1,エンジンがかかる
2,エンジンはかかるが異音がする
3,エンジン不動
それぞれ比較した場合、一般的に不動エンジンや、異音のあるエンジンはオーバーホール費用が高くなります。
エンジンの焼きつきなど、エンジン等に大きなダメージがあればその分、部品代や加工費用(ボーリングなど)がかさむからです。当然、修理にも時間がかかります。
よく「エンジンオーバーホールの正確な料金はいくらですか?」とお問い合わせをいただきますが、「エンジンを分解してみないとわからない」という回答になります。
そっけない回答ですみません。
メールや電話で、お客さまからの情報だけでは、あくまで推測しか出来ないからです。
実際、バイクをお預かりして見てみると、お客さまが認識されていることと全然、ちがう箇所に不具合があったり、他にいくつも不具合を発見する、という事がよくあります。
これは修理全般に言えることです。
分解して、実際に目で見て、はじめてエンジンの状態を正確に知る事ができます。
<古いバイク・個人売買で購入したバイクでよくある事例>
年々、インターネットオークションなど「個人売買で安く購入したバイクを修理したら、あちこちに不具合が見つかって結局、ショップで買うより高くついた」というケースが増えています。
当店でも、当初はエンジンオーバーホールのご依頼が、いざ作業に着手すると、エンジン以外(とくに電装系)の不具合を発見することが多々、あります。
修理しないとエンジンのオーバーホールが完了できませんので別途、修理費用(部品代+工賃)が発生します。
一般的に相場より安く販売されている車両は、それなりの理由があると考えておいた方がいいでしょう。
目的によって変わる
ひとくちにエンジンのオーバーホールと言っても、お客さまによって、目的はさまざまです。
1)「スタッドボルトやドレンボルトを破損してしまったので直してほしい」
2)「調子の悪いエンジン、動かなくなったエンジンをリフレッシュさせて愛車に長く乗り続けたい」
3)レストアに近い内容を依頼されるお客さま
当店で一番多いのは3のお客さまです。
レストア
元の状態に戻すこと。復元すること。特に、古くなって傷んだ自動車や家具などを修復すること。「古い家具のレストア」
車両を復元すること。原型に忠実に行うが、レプリカや複製品とは違い、欠品の部品は手作りで製作する。
(Weblio辞書より)
「新品部品が手に入るうちに、総取っ替えしてほしい」「せっかくだからエンジン以外もリフレッシュしたい」といった、レストアに近いご依頼です。
一例:
フロントフォークの再メッキやオーバーホール、リアサスペンション交換、足回りのオーバーホール、ウオタニSP装着、塗装、ベアリング交換などのメンテナンスほか
以上のように、お客さまの目的・エンジン(バイク)の状態・ご予算によって、エンジンOH料金や、トータルの料金が変わってきます。
お金をかけようと思えば、いくらでもかけられますし、逆に予算をおさえたいと思っていても、お客さまが考えていた以上にエンジンが損傷していたり、ほかの箇所に不具合があって、高くつく事もあります。
「自分のバイクに、いくらまでなら予算が出せるのか?」
不測の事態を考慮しつつ、お客さまご自身で上限をある程度、考えていただくことが先決かと思います。
その上で
「予算上限いくらでエンジン(もしくは車体)をオーバーホールしたいのですが、可能ですか?」
問い合わせていただくと、当店としては、回答しやすくなります。
ご予算の範囲内で現実的に可能なこと、不可能なことが明確になるからです。
エンジンOHで失敗しない方法
料金だけに意識が向きがちですが、
「エンジンのオーバーホールは、どこでやっても同じ」
ではありません。
外科の手術も、ドクターによって技術の差がありますね。エンジンのオーバーホールも同じです。
・具体的にどのような作業をするのか
・どこまでやるのか
・誰がやるのか(どのようにやるのか)
「オーバーホール」と一口に言いますが、作業の中身はショップによってさまざまです。
分解して、部品交換して、ただ組み直すだけなのか、あるいは面研、バルブガイド交換、バルブ擦り合わせなどをおこない、しっかり精度を出した上でエンジンを組むのか。
作業内容や、組む人によって完成したエンジンのクオリティは違ってきます。
(レーサーなど一部の特殊車両を除いて、新車もただ部品を組んであるだけの状態です)
オーバーホール料金が高ければ、クオリティも高いとは限らないのが実情ですし、あまりに安すぎる場合、どこかで無理をしなければ店側は採算が合いません。
(なにかあった場合、後々、困るのはお客さまご自身です)
お客さまにおかれましては、料金だけではなく、オーバーホールの中身を吟味された上で、比較検討されるのがよろしいかと思います。
当店では、レーサーエンジンを組むのと同じクオリティで作業を行っています。
どの部品を交換したのか、お客さまがわかるようにしています。
精度向上と業務効率化のため、スイス製のバルブシートリフェーサーを導入しました(2022年6月)
エンジンオーバーホール
バーチャル見学会TM
エンジン分解・組み立て、納車までの全行程
当店でおこなっているエンジンオーバーホールの基本工程を、オンライン上で見て頂けるようにしました。
ボリュームがありますので、お気に入りの飲み物を用意して、ゆっくりご覧いただければと思います。
(本ページをブックマーク登録(お気に入り登録)していただくと便利です)
※PCでの閲覧推奨
■1、エンジンの取り外し
エンジンを降ろすために、エンジンオイルの抜き取り、ガソリンタンク、キャブレター(インジェクションの車の場合スロットルボディ)、エキゾーストマフラー等を取り外します
GPz1100(空冷4サイクルDOHC2バルブ並列4気筒 1089cc)
CB750F(RC04 空冷4サイクルDOHC4バルブ並列4気筒 748cc)
ZX-10R(水冷4サイクルDOHC4バルブ並列4気筒 998cc)
カウル付きの場合はカウルの取り外し、水冷の場合、クーラント(冷却水)の抜き取りと、ラジエターの取り外しをおこないます。
固着との闘い
「ただ部品を取り外すだけ・・・」に思えるかもしれませんが、古いバイクや、長期不動車はボルトが錆びて、固着していることがほとんどです。
なかには緩めていく途中でボルトが折れることもありますし、ネジの場合、ネジの頭が錆びて、潰れていることもあります。
しかし、どんな場合でも、外さないとエンジンがオーバーホールできません。
なんとかして取り外して、代わりのネジやボルトを用意したり、ねじ山がつぶれた場合、修復します。
旧車だと1台のバイクでこれが何十本とあるわけです。
うまく外れた場合でも、ボルトなどの錆を落とす作業が発生します。新車みたいに固着や錆びがなく、スムーズに取り外しができればいいですが旧車の場合、ほぼ、そういったケースはありません。
よくある事例
・本来、あるはずのボルトやネジがついてない
・ネジやボルトが緩んでいる
→新車・旧車にかぎらず、ボルトの緩みは点検が必要です。ただし、締めすぎに注意してください。
■2、エンジン分解
車体からエンジンを取り外したら、分解作業に入ります。
CB750F(RC04)のエンジン分解の様子をご覧ください。ヘッドカバーを外した状態からスタートです。
エンジン各部位の名称
カムシャフトと、カムチェーンを外し、シリンダーヘッドを取り外します。
シリンダーを外すと、ピストンが見えてきます。続いて、ピストンを取り外します。
(ご覧のようにCB750Fのエンジンは構造上、砂がたまります)
ここまでが、いわゆる「腰上」と呼ばれる部分の分解です。次は腰下、クランクケースの分解です。
クラッチを取り外します。
クラッチハウジング
クラッチハウジング脱着後
クランクケース内部
トランスミッション
トランスミッション
ギア抜けが発生していたトランスミッション(GSX-R1000)
クランクケース内部には、トランスミッション(ギアチェンジするための歯車)や、クランクシャフトなどがあります。自転車に例えると、ペダルをこいでる脚がピストン、ペダルの付け根(こぐと回転する軸の部分)がクランクシャフトにあたります。
エンジンの動力をチェーンでタイヤに伝えるのも、自転車とよく似ています。
トランスミッションのギア抜けは、赤い矢印の箇所が欠けていたり、摩耗して角が丸くなると、噛み合ったときに滑ってしまい、ギア抜けが発生します。
旧車の場合、ほとんど純正部品が手に入らないため、WPC処理を希望される方が増えています。
CB750F RC04のオイルパン(エンジン下のオイルが溜まるところ)のフィルター
クランクシャフトが焼き付いたZX-10Rのオイルパン。
見た事もないゲル状の物質が、オイルフィルターを詰まらせていました。(原因はブログで)
CB750F(RC04)のフィルターにある、うす茶色のゴミのようなものは、液体ガスケットです。
液体ガスケットは、クランクケースとシリンダー、シリンダーとシリンダーヘッドなど、エンジンの合わせ面に使用する接着剤のようなものです。
必要以上に液体ガスケットを使用した場合、オイルフィルターを詰まらせたり、オイルライン(オイルの通り道)を塞いでしまうおそれがあります。
最悪の場合、エンジンオイルの潤滑不良を招いて、クランクシャフトが焼き付きます。
(走行中なら大きな事故になりかねません)
そのため、当店では液体ガスケットの使用を必要最小限に留めています。
CB750F(RC04)の純正ピストン
じつはボアアップ車だった
エンジンを分解すると、オーバーサイズピストンが使用(ボアアップ)されている事があります。オーナーさまもご存じなく(購入時に知らなかった)、この時、初めて発覚することがよくあります。
もし、オーバーサイズピストンが手に入らず、シリンダーをボーリングできない場合、シリンダーライナーを製作・打ち換えて、標準サイズの純正ピストンを使用する(ボアを元の大きさに戻す)といった手段を選ぶオーナーさんが多いです。
ボアアップされているエンジンのボアを、さらに大きくする(排気量をUPする)と、エンジンの耐久性が低下するためです。
※シリンダーのボーリングや、ライナー製作・打ち替えをおこなう場合、通常より納期がかかります。
ピストンの話
ピストンの周囲に付いてる輪っかのような部品をピストンリングと言います。
GSX400Fのピストン
CB750Fのシリンダーヘッド
ピストンリングにはそれぞれ役目があります。
トップリングの役目は、燃焼室で発生したガスが、ピストンとシリンダーの隙間からクランクケースに吹き抜けないようにすること。
抜けてしまうと、パワーが落ちるからです。
セカンドリングはトップリングのサポートするためにあります。
オイルリングは、シリンダーの壁についたオイルをかき落とすのが役目。オイルリングがへたってくると、かき切れなくなったオイルが、燃焼室に入ってしまいます。
すると、オイルが燃焼室で燃えてしまい、マフラーから白煙を吹くようになります。
つまりピストンリングは、シリンダーの壁と密着することで、役目を果たしているわけです。
オーバーホールするのであればピストンリングと、できればピストンも交換したほうが無難です。見た目は問題なさそうに見えても長期間、高熱にさらされることによって、ピストンが歪(ひず)んでいる事があるからです。
ただ絶版車の場合、純正ピストンや、社外ピストンが手に入らない事があります。
再利用が可能なら既存のピストンを使用しますが、その場合でも、ピストンリングは新品への交換をお勧めします。
この時、ピストンとピストンリングは、同じ製品で揃えるようにしてください。
ピストンリングとピストンは、2つセットで使用することを前提に設計されています。
同じ車種用の製品でも、異なるメーカーのピストンと、ピストンリングを組み合わせると、サイズや材質の違いから、エンジントラブルの元になります。
参考情報:よくあるご質問
純正部品が廃番になっていたり、部品が入手できない時は、WPC処理や、DLC(ダイヤモンド・ライク・カーボンコーティング)などの表面処理をおこなって、部品を再利用することがあります。
WPC処理は、「部品の疲労強度UP(1.2倍から3倍ほど)」、「フリクション低減による潤滑性能の向上」、「部品摩擦の低減」、「焼き付きの抑制」といった効果があると言われています。
これらの技術はF-1や、MotoGPなどレースで使用されているほか、市販車CBR1000RR-Rにも採用されています。
当店では、さまざまな表面処理加工を扱っている実績豊富な企業様と取引させていただいております。
鍛造ピストンの注意点
走行距離を重ねた鍛造ピストンを再利用すると、割れる危険性があります。
見た目には再利用できそうでも、ピストンに歪(ひず)みが発生している事があるからです。
よくヨシムラのオヤジさん(ポップ吉村氏)に「一度、使った鍛造ピストンは再利用するな」と注意されたものです。実際、ヨシムラが再利用して組んだレース用エンジンの鍛造ピストンは割れていました。
以上の経験から、当店ではエンジンをオーバーホールする際、基本的に鍛造ピストンは再利用せず、交換をお奨めしています。
ガスケット・シール類
シールやガスケット類は原則、新品交換です。
縮んだり、膨張したシールを再利用すると、オイル漏れや、水漏れ(水冷)の原因になります。
シリンダーガスケットの製作
水冷の絶版車・旧車は、ラジエーターホースなどの経年劣化により、クーラントが漏れることがあります。
ホース類がプラスチックみたいに固くなることで、ひび割れが発生しやすくなり、そこから水漏れします。
そこまで固くない場合でも、一度ホースを外して再度取り付けると、隙間が発生するため、クーラントが漏れることがあります。交換して間もない場合を除いて、シール類やホースは交換をお勧めします。
エンジンを分解する際も、やはり固着ボルトとの闘いは続きます。
ひととおりエンジンの分解が終わると、エンジンの状態が把握できますので、どの部品の交換が必要か、だいたいの見当が付きます。(のちほど測定する時に、正確にわかります)
■3、パーツ洗浄
分解したエンジンパーツの洗浄をおこないます。作業は地味ですが、とても重要です。
岩みたいに固着したカーボン(すす)を丁寧に取り除きます。
ウエットブラスト処理したGPz1100のシリンダーヘッド。Before/After
CBR250RR(MC22)のピストン。Before/After
バルブ研磨 Before/After
研磨したCB750F(手前)とCBR1000RR(奥 SC57)のバルブ(鏡面仕上げ)
洗浄することで、汚れで見えなかったパーツのクラック(ひび)等が発見しやすくなります。
クランクケースやシリンダーに残ったガスケットを剥がします。
40年以上、一度もエンジンを開けたことがないバイクだと、ガスケットが固着していて、簡単には剥がれません。
しかし、ここで手を抜いてしまうと、後の工程でどんなに頑張っても、良いエンジンは組み上がらないので、しっかりガスケットを取り除きます。
ヨシムラのオヤジさん(現・株式会社ヨシムラジャパン創業者)に「とにかく綺麗にしろ、手を抜くな」と一年中、言われたものです。
エンジンを開けると歴史がわかる
エンジンを分解すると、そのバイクが、どういうふうに扱われてきたかがわかります。
たとえば、エンジンオイルが定期的に交換されていない車両は、メタルやカムシャフトの損傷が激しかったりします。
焼き付いたエンジンの場合、引き金になった原因が見えてきますし、過去にエンジンのオーバーホールをおこなったかどうかもわかります。
なかには、古いガスケットをきちんと剥がさないまま、新品のガスケットが使われていて、サンドイッチ状態になっていたり、強引に開けようとしたのか、クランクケースの合わせ面に大きな傷がついている事もあります。
いずれにしても合わせ面に凹凸があると、オイル漏れの要因になりますので丁寧にガスケットを取り除きます。
■4、測定
シリンダーボア、ピストンサイズ、ピストンクリアランス、コンロッド、クランクメタルのクリアランス等を測定します。
またクランクシャフトは、バランス取りをおこないます。
同時にクランクケースの歪みもチェックします。
クランクシャフトのバランス取りをおこなうことで、エンジンの振動が減り、音が小さくなります。
(上)カムシャフトメタル/(下)カムシャフト
>> クランクシャフト再利用と新品交換のエンジン音の比較動画
測定することで、目視だけではわからない事を数字で判断することができます。もし適正数値から大きく外れている場合、再利用できませんので、原則として部品交換が必要です。
焼き付いたエンジンはクランクシャフトや、カムシャフト、メタル交換が必要な場合があります。
(焼き付いたクランクシャフトが再生できるようになりました)
さて、ここでようやく、交換が必要な部品・再利用可能な部品が明らかになります。
致命的な部品の交換(たとえばクランクシャフト)が必要だったり、交換が必要な部品が廃番になっている旨を、お客さまに伝える場合、私たち店側も気が重くなります。
焼き付いたコンロッドメタル(GSX400E)
焼き付いたクランクシャフトの修復例(CBX400F)
焼き付いてだ円になっていた箇所を溶接・研磨して再生。処理をおこなっていない箇所と比較すると、違いがわかるかと思います。
4ストエンジンでオイルの定期交換を怠ったり、オイルポンプの故障でエンジンが焼き付いた場合、このようにクランクシャフトや、メタルにダメージがいくことが多いです。
エンジンオーバーホール後、交換しなかったオイルポンプの故障で焼き付いた事例もあります。
旧車の場合、オイルポンプの交換を推奨します。
オイルポンプとは?
人間の心臓と同じ。心臓は血液を全身に行き渡るのが役目。オイルポンプによって、エンジンにオイルを循環させている。
■5、シリンダーヘッド
完成したエンジンのクオリティの90%は、シリンダーヘッドで決まると実感しています。
大きく分けて、4つの作業をおこないます。
1:バルブガイド交換
2:面研
3:バルブシート・バルブの修正
4:組み立て
シリンダーヘッドとは?
ピストンやシリンダーとちがい、シリンダーヘッドは「名前は知ってるけど、複雑でよくわからない」イメージがあると思います。
そこで作業を説明する前に、シリンダーヘッドがどんな働きをしているパーツなのかを、できるだけわかりやすく、簡単に説明します。
ひとことで言うと、シリンダーヘッドは呼吸器官です。
もう少し分かりやすく言えば、口と鼻。
試しに、鼻で空気を吸い込んで、口で吐いてみてください。
「鼻で吸い込んで、口で吐く」
シリンダーヘッドは、それと似たような事をしてるとイメージしてください。
エンジンは
1、吸気
2、圧縮
3、燃焼
4、排気
という4つの工程で動いています。
吸気とは、混合気(ガソリンと空気)が、シリンダーの中に送り込まれることです。
鼻で空気を吸い込むのと同じですね。
エンジンの、口や鼻の代わりになっているのがバルブです。
写真は燃焼室の説明です。
バルブは2種類あって、混合気を吸い込むためのバルブを「インテークバルブ」、排気するためのバルブを「エキゾーストバルブ」と言います。
水色の矢印のように吸気され、バルブが開くことで燃焼室に混合気が送られます。
次に、ピストンによって混合気が圧縮され、プラグが点火することで、爆発が起きます。
燃焼したガスは、エキゾーストバルブが開くことによって、マフラーを経由して、外に排気されます(赤い矢印)
1、吸気(鼻で吸う)
2、圧縮
3、燃焼
4、排気(口で吐く)
なんとなく、イメージできれば十分です。
シリンダーヘッドから取り外したバルブと、バルブガイド
のちほど登場しますが、バルブガイドは、シリンダーヘッドに圧入されていて、通常は見えにくい位置にあります。
写真はイメージしやすいよう、シリンダーヘッドから取り外した状態です。
シリンダーの中をピストンが往復するように、バルブも「バルブガイド」という筒の中を高速で往復運動しています。(黄色の矢印)
1)バルブが適切なタイミングで開閉している
2)きちんと密閉されている
この2つがエンジンにとって重要です。
もし、人間が息を止めたまま、走り出したらどうなりますか?
自分の思うタイミングで息を吸ったり、吐いたりできなかったら? いつも通りに動くことはできませんね。
バルブがどれだけ大事か、なんとなく想像できると思います。
それでは、前置きが長くなりましたが、本題に入りましょう。
5-1:バルブガイド交換
バルブが何度も何度も、開閉を繰り返すうちに、バルブ本体やバルブガイドが摩耗してきます。
すると、バルブが横向き(写真 水色の矢印の方向)にグラグラと揺れ動くようになります。
このような状態でエンジンを組むと、バルブが密閉せず、調子の悪いエンジンになってしまうため、バルブガイドの交換が必要になります。
専用工具を使ってバルブガイドを取り外します(GPz1100)
バルブガイドを取り外した状態(GPz1100)
新しいバルブガイドを入れる前に、ガイドホールのボーリング(穴を大きくするための加工)をおこないます。
なぜ、ボーリングする必要があるのかというと、バルブガイドを取り外した際、ガイドホールの壁面が荒れるからです。
荒れた壁面をきれいに(平に)するためにボーリングをおこないます。ちなみに、使用するバルブガイドは標準サイズではなく、少し大きめの径のものを使用します。
一度、バルブガイドを外すとガイドホールが大きくなるため、標準サイズのガイドを使用すると、わずかにすき間が発生します。つまりバルブガイドに、ガタつきが出てしまうからです。
そこで若干、大きめのバルブガイドをガイドホールに合わせて加工し、その後に圧入します。
新しいバルブガイドを入れた状態(GPz1100F)
バルブステム合わせ後
最後にバルブガイドの穴をバルブステム(バルブの棒状の部分)に合わせて、ボーリングします。
この時、バルブステムと、バルブガイドのクリアランスが重要です。クリアランスが狭すぎても、広すぎてもダメで、絶妙なさじ加減があります。
1,バルブガイドの取り外し
2,ガイドホールのボーリング
3,バルブガイドの圧入
4,バルブガイドの穴のボーリング
ここまでやって、バルブガイドの交換作業は一段落です。
(バルブガイドは純正品が手に入らなくても、製作することが可能です)
5-2:シリンダーヘッド面研
シリンダーヘッドの面を研磨します。(修正面研、またはメンテナンス面研といいます)
シリンダーヘッドの歪み(ひずみ)を取り除くことが目的です。長年、繰り返し熱にさらされることによって、シリンダーヘッドが変形し、オイル漏れやオイルにじみが発生しやすくなります。
シリンダーヘッドを研磨して平面にします。面研することでエンジンを組んだ際の密着性が向上します。
当店では設備を導入し、自社で面研をおこなっています。(精度1000分の1mm)
しっかり密着させて、圧縮を出すためにバルブシートと、バルブフェイス(バルブの傘の部分)を研磨します。
薄い赤色(写真)の輪っか部分をバルブシートと言います。
バルブシートは、指輪みたいなリング状の部品が圧入されています。(バルブシートリング)
5-3:バルブシート・バルブの修正
削りすぎに注意しながら、バルブシートリフェーサーを使って、バルブシートを研磨します。
シートリングが陥没していたり、バルブシートを削りすぎてしまうと、シートリングを交換しなければならなくなります。シートリング交換は高額なため、細心の注意を払って作業します。
バルブシートの修正が終わったら、次はバルブのすり合わせをおこないます。
5-4:バルブすり合わせ
カーボン(すす)が付いたバルブ→洗浄→鏡面仕上げ研磨→バルブすり合わせ→完成
すり合わせをおこなう前(CB125T)
すり合わせをおこなった後(CB125T)
バルブとバルブシートを密着させるため、バルブのすり合わせをおこないます。
光明丹(こうみょうたん)というオレンジ色の液体を塗布して、バルブの当たりを確認します。まだら模様になっていたり、ムラがある場合、その部分が密着していないという事です。
当たり具合を確認しながら、作業をおこないます。ただし、光明丹だけで判断すると圧縮漏れを見逃しかねません。
エンジンオイル(または灯油)を燃焼室に入れると、バルブが密着しているかどうか確認できます。
手前の燃焼室は空気が漏れて、泡が出ています。バルブが密着していないからです。それに対して、奥の燃焼室は密着しているため、気泡が出ていません。
またバルブとシートの間に隙間があると、エンジンオイルが流れ出てしまいます。
当店では万全を期すため、スイス製の専用計測器で圧縮を測っています。
・・・
ここまで読んでいただくと、シリンダーヘッドの重要性が、わかっていただけたかと思います。しかし、まだまだ作業は続きます。
CB1300SF(ブログ)
走行10万km超えのXJ400R(ブログ)
公道を走行するバイクは、燃焼室にカーボン(すす)が堆積しやすくなります。
堆積したカーボンが、バルブとバルブシートの間に入ると、そこから空気が漏れて圧縮が低下します。(前出のとおりバルブの当たりにムラができた状態)
要するにパワーダウンするわけです。
この場合、燃焼室だけでなく、エキゾーストマフラー側にもカーボンが詰まってきますので、負のスパイラルです。
・アクセルを開けた時、加速がにぶい(トルク感がとぼしい)
・より大きくアクセルを開ける→燃費が悪くなる
エンジンはかかるし、走行はできるけど、「なんだか調子が良くない」といった感じです。
この時、燃調(ガソリンと空気のバランス)の狂いが原因と判断して、キャブレターなどを調整する方が多いようです。
しかし、原因がエンジンの場合、キャブレターを調整したところで、根本的な解決になりません。
まずエンジンに、圧縮があるかどうかを確認したほうがいいでしょう。
「何回も、何回も、キャブ調整しているのに良くならない・・」
「有名店でセッティングしてもらったんですが・・・」
当店にも、そういったお客さまが多数、来店されます。エンジンを開けると「キャブレターで良くなるはずがない」というケースがほとんどです。
※カーボン堆積や不調の原因はさまざまあります。上記はよくある事例のほんの一部です
5-5:バルブタイミング
シリンダーヘッドを組み立て、タペットクリアランス(バルブクリアランス)調整をおこないます。
バルブタイミングの重要性
「シリンダーヘッドとは」でお伝えしたように、エンジンが動いている間、バルブは開閉を繰り返しています。
カムシャフトが回転して、タペットを押すことで、バルブが開いたり閉まったりしています。
人間が口や鼻で呼吸するように、エンジンもバルブによって呼吸しています。バルブが開いたり、閉まったりする(呼吸する)タイミングを決めるのがバルブタイミングです。
シリンダーヘッドの断面図(ベース画像の出典:Wikipedia)
バルブタイミングの調整は、カムシャフトと、タペットの隙間(黄色い線の部分)でおこないます。
タペットの隙間(クリアランス)を調整するから、「タペットクリアランスの調整」(またはバルブクリアランスの調整)と言います。
なぜクリアランスが必要なのかというと、バルブ(バルブフェイス)やカムシャフト等が摩耗するからです。
(金属が熱によって膨張・収縮するからという理由もあります)
摩耗すると、バルブとバルブシートが密閉できなくなり、圧縮漏れが起きてしまいます。
最終的にエンジンが停止したり、アイドリングせず走行不能になります。
そうならないように、できるだけ長い間、適切なバルブタイミングを維持できるよう、あらかじめクリアランスがとられています。
要するに、「遊び」(適度なすき間)を持たせておくわけです。
ところが、新車時は適切なクリアランスがあっても、走行距離を重ねるうちに、バルブやカムシャフトの摩耗等によって、少しずつクリアランスが狭くなり、バルブタイミングがずれてきます。
キャパ(許容範囲)を越えてしまうと、走行に支障が出てきます。
そのためエンジンのオーバーホール時はタペットクリアランスの調整をおこないます。
もし、ふだん走行していて、エンジンから「カタカタ」音(大きめ)がするなら、タペットクリアランスの調整が必要かもしれません。
タペットクリアランスの調整だけなら、基本的にエンジンを載せたまま調整できます。
(エンジンが冷えている時に調整します)
ZX-10R
自動車のエンジン内部(出典:Wikipedia)
※スマホの方は動画をタップすると全体が見られます
※前出の「シリンダーヘッド断面図」とは、エンジンの向きが左右逆のため、インテークバルブやエキゾーストバルブ、カムの回転方向などが逆向きになっている
動画のように適切なタイミングでバルブが開閉し、しっかりと密閉していることが大事です。
同じく、ピストン(ピストンリング)とシリンダーも、密着している(適切なクリアランスが保たれている)必要があります。
・・・
以上がシリンダーヘッドの工程です。作業日数としては、およそ2週間かかります。
■6、エンジン塗装・組み立て
必要に応じて、簡易的にではありますが、ウレタン塗装をおこなっています(無料)
GPz1100
Before
After
CB750F
Before
After
塗装後、各部の動作を見ながら、エンジンを組み立てます。
この時、オイルシールなどのゴム製部品や、ガスケットを新品交換します。
(ただしクラッチなど、使用できる部品に関しては交換せずに再利用します)
全ての部品が揃っていれば、エンジンの組み立て自体はそう時間はかからないものです。
ただ本来、付いているはずの部品が付いていなかったり、再利用できない部品や、ボルトやネジの代替品を探したりするケースが多く、部品待ちに時間がかかります。
とくに海外から部品を取り寄せる場合、数ヶ月かかることがあります。
エンジン完成後、シリンダーの圧縮を測定して、良好な状態であれば車体にエンジンを載せます。
■キャブレター
エンジンオーバーホール後は、キャブレターの調整をおこないます。そのため調整するにあたって、内部洗浄します。
キャブレターはエンジンの中に空気と燃料(ガソリン)を送る装置です。燃料と空気のバランスを調整する、重要な装置でもあります。
キャブレターの内部は、お裁縫の針の穴ほど、小さな穴の空いた部品が使用されています。
ほかにも、小さな部品が複数、使われています。
例:
メインジェット、スロージェット、ジェットニードル、パイロットエアスクリュー、スロージェット、ニードルジェット、フロートバルブ他
しばらくエンジンをかけていないと、劣化したガソリンによって、キャブレター内の部品が目詰まりすることがあります。その状態で、いくらキャブレターを調整しても意味がありません。
(ガソリンタンク内の錆が、キャブレター内部に流れて詰まることもあります)
そのため、まずは洗浄、そのあとで調整をおこなうわけです。
また必要に応じて、ジェット類やフロートガスケット、インシュレーターを交換します。
不動車のキャブレター内部。経年劣化でフロートガスケットは縮み、劣化して固着したガソリンが、フロートやジェット類を詰まらせている(TZR250)
FCRキャブレター FCRに限らず、キャブレターは本体が摩耗する消耗品
キャブレターとエンジンをつなぐ黒いゴム部品をインシュレーターと言います。
インシュレーターは、つねにエンジンの熱にさらされるため、だんだんとプラスチックみたいに固くなり、硬化すると、ひび割れしやすくなります。
ひび割れした場合、エンジンの中に空気が入って、不調の原因になります。
(必要以上の空気がエンジン内部に入り、空気と燃料のバランスが崩れてしまう)
スポンジのエアフィルター(湿式タイプ)は、手で触ってボロボロ崩れ落ちるようなら、交換時期です。
そのまま継続使用すると、キャブレター内部にスポンジが吸い込まれるため、注意が必要です。
インジェクション車の場合、スロットルバルブを洗浄します。
■7、エンジン搭載・テスト走行
車体にエンジンを載せて試運転をおこないます。良好なら、全ての部品を取り付けた後、キャブレターを調整します。
(オーバーホール後はエンジンの状態が変化するため、キャブ調整は必須です)
その後、代表みずからテスト走行をおこないます。
10kmほどテスト走行して、エンジンオイルやクーラント(冷却水)の漏れがないかどうかを確認します。
問題がなければ納車。もし不具合があれば、その箇所を改善した後、納車になります。
ZX-10R
GPZ1100
エンジンだけ良くてもダメな理由
エンジンを積むと作業完了まであと少しですが、実際はすんなりテスト走行・納車にならない事がほとんどです。
というのも、エンジン以外の不具合を発見することが、とても多いからです。
一般的に、生産から時間が経過したバイクほど、多くのオーナーの手に渡っています。
旧車・絶版車の場合、多くの方は中古車を入手されるため、現在のオーナーさん自身、購入したバイクが、どこがどのように改造されているか、元(新車時)はどういう状態だったのか、把握していないのが通常です。
バイクの調子の良し悪しも、たいていは、購入した時のバイクの状態が基準になります。
そのため「こんなものかな」と不具合に気づかないまま、乗っていらっしゃる方が少なくありません。
とくにむずかしいのは、エンジンがまったくかからない不動車の場合です。もともとどういう状態だったのか、バイクをお預かりする段階では、私たちには確認ができないからです。
(お客さまからの情報が頼りです)
ところが作業を進めていくと、エンジンオーバーホールの工程でお伝えしたように、オーナーさまご自身も知らなかった事実が判明したり、エンジン以外の不具合を発見することが多々、あります。
すると、発見した不具合を改善しないかぎり、テスト走行することができなくなります。
(車検が切れているバイクの場合、車検がとおらないとテスト走行できません)
よくあるエンジン以外の故障例:
フューエルコック(ガソリンコック)、セルモーター、バッテリー、プラグ、プラグキャップ、プラグコード、イグニッションコイル、ジェネレーター、ピックアップコイル、その他電気系統の不具合、ボルトやネジの不足、ブレーキの引き摺りほか
プラスチックのように固くなったホース
シール類やラジエーターホース、インシュレーターなど古くなったゴム製品は、一度取り外すと、取り付けられない場合があります。うまく取り付けられたとしても、後にひびが発生したり、割れることがあります。
古いバイクほど、電気系統のトラブルが発生しやすい。
数十秒前まで動いていたものが突然、故障することもごく当たり前に起こります。
セルモーターもよくあるトラブル事例の一つ。セル内部が錆びていたり、グリスが固着して、回る力が弱くなっていることがあります。(写真はセルモーターを分解・清掃・グリスアップしたもの)
旧車に多い電気系統トラブル
エンジン以外で、時間のかかる不具合のトップが電装系です。
電気という目に見えないものの不具合をなおすのは、とてもむずかしいです。とくに電気系統が改造された車両の場合、配線がどこに、どうつながっているか、改造した本人にしかわかりません。
(改造されているハーネスを修正することは、一から配線を引き直す以上に手間暇がかかります)
また、なんとか不具合の箇所を特定できても、肝心の部品が廃番になっていて、手に入らない事もあります。(時間をかけて探すしかありません)
そのため電気系統の修理は、場合によってはエンジンをオーバーホールする以上に時間がかかる事もあります。
とくに電装系パーツで多いのが、「車種専用パーツのはずが合わない・取り付けできない」というケースです。
このようにエンジンのオーバーホールと言っても、決して「エンジンの事だけを考えればいい」というわけではありません。
・きちんとガソリンがエンジンまで流れているかどうか
・空気とガソリンのバランスは適切か(キャブレター)
・プラグに火が飛んでいるかどうか
・バルブタイミングや点火タイミングは適切か
スピードメーター、タコメーター、ウィンカー、ライト、ラジエーターのファン、ブレーキランプ等がきちんと作動するかどうか、タイヤの空気圧はどうか・・・etc
こまかい点をあげれば、キリがないほどです。
エンジン以外の要素を含めて、トータルで考えることが大事です。
どこか一箇所だけを直せば劇的に調子が良くなるわけではなく、いくつもの原因が積み重なって、不調になっているケースがほとんどだからです。
「エンジンを分解して、新しい部品を使って、元どおりの状態にする」
それだけで済むなら話は簡単ですが、そう単純ではないのが、エンジンオーバーホールのむずかしいところです。
反面、エンジンが完調になって納車する際、「すごい! 新車みたいです!」お客さまが喜んでくださった時にやりがいを感じる部分でもあります。
Q.オーバーホールすれば新車同様になりますか?
A.全ての部品を新品に交換しないかぎり、新車と同じにはなりません。
旧車の場合、全ての部品が入手できる、ということはありませんので、新車とまったく同じにはなりません。
「新車以上の精度でエンジンを組み、できるだけ新車の状態に近づける」
このようにイメージしていただくほうが、より正確だと思います。
※旧車は時代的に部品の精度や、組み方がおおざっぱでバルブガイドが斜めになっていることがよくあります。
以上、おおまかではありますが、当店がおこなっているエンジンオーバーホールの基本コースです。
(電装系などエンジン以外の箇所の修理については、エンジンOH料金以外に別途、工賃+部品代がかかります)
エンジンのオーバーホールを機に、愛車をリフレッシュしたい方向けにレストア、各種メンテナンス・塗装・フロントフォーク再メッキのほか、輸入車新規登録・バイク車検の代行なども対応致します。
ガレージ湘南では、耐熱性・耐摩耗性に優れ、粘度が低下しにくいエンジンオイル「VERITY BIKE FS HR VER3」(100%化学合成油)を使用しています。
業界トップクラスの品質保証
当店では4ストロークのエンジンオーバーホールに品質保証をつけています。
車両引き渡し後から、3ヶ月間(または走行距離3,000kmに到達するまで)保証期間を設けています。
(一般的なショップの場合:1ヶ月または1,000km)
もし保証期間中にエンジンの不具合が発生した場合、保証規定に基づいて無償修理させて頂きます。
長い保証期間は自信の証です。詳細は下記の保証規定をご覧ください。
なお作業着手後、ご不明な点につきましては、いくらでも説明させて頂きますので、気軽に質問してください。
当店ではお客さまから説明を求められた際、故障の原因や理由をきちんとお伝えしております。
重要事項
1,工具を使って作業するため、ボルトに傷や工具の痕が入ることがあります。また注意を払って作業しておりますが、部品に傷がつくこともございます。
「全くの無傷で作業する」という事は物理的に不可能なため、当店では対応致しかねます。あらかじめご了承ください。
2,お預かりした車両やエンジンに隠れた欠陥があった場合、もしくはエンジン以外(たとえばキャブレターや電気系統など)に起因する不具合や故障については保証対象外となります。
3,当店にエンジンオーバーホールをご依頼いただいた場合、保証規定の内容にすべて同意したものと判断させていただきます。
お断りさせて頂くかもしれません
あまりに予算が厳しいと、不測の事態が発生した場合に対応できなくなります。
たとえば、「ピストンリングだけを交換してほしい」というご依頼であっても、作業を進めていくなかで、ほかに不具合がある箇所を発見する、というのは日常茶飯事です。
(むしろ、不具合を発見しない事はほぼ、ありません)
当然、そのまま放置するわけに行きませんから、部品交換など修理が必要です。
「言われた所だけやってくれればいい」
という考え方もあるのでしょうが、
ガレージ湘南では「安全な状態のバイクを納車する」ことをモットーにしています。
後々、不具合が生じるリスクがあるのに、見て見ぬフリをして納車することはできません。エンジンのOHが完了しても、不具合解消のため、お客さまにお待ちいただく事も、しばしばあります。
申し訳ないのですが、プロとして安請け合いはできないという事をご理解いただければと思います。
なお、「一生、乗り続けたい」「何年でも待ちます」という全国のお客さまが常時、順番待ちされています。
そのため作業を急かしたり、頻繁に催促される方は、大変申し訳ありませんが、当店ではお断りさせて頂きます。
エンジンのオーバーホールは安全上、プラモデルを組み立てるのとはわけが違います。部品を交換して、組み立てればいい、そう単純なものではないのです。
時間がかかりますし、部品の入荷が遅れるなどして、予定よりスケジュールが延びることが、ごく当たり前に起きるものです。
1台ずつ丁寧に作業しておりますので、急かされて対応できるものではない、という事をどうか、ご理解いただければと思います。
・「仕事を頼んでやっているんだぞ」「客の言うとおりにしろ」といった横柄な態度をとる方
・一方的に自分の考えや都合だけを主張し、こちらのアドバイスに聞く耳を持たない方
・エンジン以外に起因する不具合をすべてバイクショップのせいにする方
・喧嘩腰でクレームを言ってくる方
・約束事を守っていただけない方
以上に該当する方は、当店では対応致しかねます。あらかじめご了承ください。
お問い合わせについて
ご相談は下記、専用フォームからお願い致します。
※お電話での問い合わせは受付けておりません。
毎日、全国から問い合わせを頂戴しています。社長1人で対応しているため、事前によくあるご質問を確認いただきますよう、お願い致します。
>> よくいただくご質問と回答
Q.オーバーホールをお願いしたいのですが、いつできますか?
>> オーバーホール受付から作業までの流れ
レースで使用した車両:
Z1,GS1000SZR,GSX750E,油冷GSX-R750,SV1000S,GSX-R1000,SRX600,FZR750R(OW01),TZ250,RS250,NS400R,VFR750R(RC30),RVF750(RC45),VTR250,VTR1000SP2,DUCATI888
所有バイク:
NSR250R MC28,ハーレー FLSTC,VT250 SPADA,DUCATI 851,(過去所有 Z1,GSX750,CB750F,ZX-11,RC30,TZ250)
レース用:
GSX-R1000,GSX-R750,VTR250,CBR600F,NSR Miniほか