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エンジンの寿命 部品の状態で比較

「(メーター改ざんがなくても)走行距離とエンジンの状態が、かならず比例するとはかぎらない」

「バイクの扱い方や走行環境、メンテナンスによって同じ車種、同じ走行距離でも、エンジンのコンディションは1台1台異なる」

​お問い合わせ時やブログなどで、お伝えしていますが、やはり実物を見ないことにはイメージがわかないと思います。

​そこで、わかりやすい事例を紹介させていただきます。(空冷二気筒)

 

「なぜ、ボアアップするとエンジンが壊れるのか」を加筆しました(2025.9.11)

バイクピストン 寿命
バイクピストン 寿命

走行距離19,183kmで焼き付いたCB125T純正ピストン

バイクピストン 寿命

走行距離47,968kmのCB125T中華製142ccピストン。リング交換すればまだまだ使える状態でした。

同じ車種ですが、年式・オーナーさんは異なります。

 

焼き付きの原因はエンジンオイルが入っていなかったこと。個人売買で購入後、帰宅途中でエンジンが止まったそうです。

​いっぽう走行距離47,968kmのピストンは、当店でボアアップキットを組まれたお客さまのものです。

「中華製のキットだし、すぐ壊れるにちがいない」

ボアアップを依頼されたオーナーさんは当初、そう思っていたそうです。ところが当店代表 日向のアドバイスどおり、化学合成油のエンジンオイルを使用し、油温管理(暖機運転を含む)を徹底。

​結果的にCB125Tを降りるまでノントラブルで走っていました。(オイル漏れ、にじみ、白煙なし)

バイクシリンダー 寿命
バイク 4ストエンジン 焼き付き

走行距離19,183kmで焼き付いた純正シリンダー。1番シリンダーに縦の傷が入っていました。

バイクシリンダー 寿命

走行距離47,968kmの中華製142ccシリンダー。十分、再利用できる状態でした。

走行距離8万キロ超えのエンジンを分解してみました

ボアアップキットを組んだオーナーさんが降りる際、当店でエンジンの状態を検証する事になりました。

バイクエンジン 寿命
バイクエンジン 寿命

シリンダーヘッドは、バルブガイドのガタは全くなし。バルブシート(リング)も軽い修正で十分使える状態。

バイクエンジン 寿命
バイクエンジン 寿命

​カムシャフトは多少傷があるものの、メーカー規定値の範囲内でした。

​一部パーツではあるものの、前出のCB125Tと比較して2.5倍以上の差が出る結果となりました。

 

こうして見比べてみると、「扱いかた次第で、エンジン寿命が短くなることもあるし、長持ちすることもある」ということがイメージできるかと思います。

余談になりますが、

代表 日向のシグナス(ヤマハの125ccスクーター)は、エンジンオーバーホール無し・オイル交換だけで走行距離10万kmを超えています。

(異音、振動なし。始動性も良好なままです)

​​

・メーカー指定の交換サイクルを守る(オイルフィルター含む)

・メーカーが指定する粘度のオイルを使用する

​​

以上を守ることが、エンジン寿命に大きく影響します。

CB750F RC04 ピストン比較

走行距離22,816kmと、20,035kmのピストンを並べてみました。​それぞれべつのCB750Fで、距離は実走行かと思われます。

A.走行距離22,816km(Vol.1

CB750F オーバーホールした純正ピストン
CB750F オーバーホールした純正ピストン

B.走行距離20,035km(Vol.2

CB750F オーバーホールした純正ピストン
CB750F オーバーホールした純正ピストン

マフラーやキャブレターなど、仕様が異なるため単純比較はできませんが、Aのピストン側面のほうがわずかに打痕が多く見られました。(写真ではエンジンオイルが付着しているためわかりづらいかもしれません)

​ピストン頭のカーボンの付き具合は同じぐらいです。

ボアアップしたエンジンが壊れる理由

排気量を問わず、ボアアップして壊れたエンジンをいくつも目の当たりにしてきました。​

ネット上でも、明確に言及されていないようですので、「壊れる仕組み」を公開します。

順を追って、解説していきます。

1,ボアアップする

ボアアップ=排気量が増えると、エンジンの熱量が増えます。

どの程度、ボアを大きくするかによりますが、純正オイルクーラーや、純正ラジエーターでは冷却が追いつかなくなることがあります。(オーバーヒート、焼き付きの原因)

「だったら、社外品のオイルクーラーをつければいい」

多くの方はそう考えられるようですが、オイルクーラーの容量を大きくしても、オイルポンプが純正のままでは油圧不足になります。

油圧が不足すると、エンジンが潤滑不良となり、クランクシャフト焼き付きなどのトラブルに繋がります。

(人間でたとえると、体重120kgの人に、体重60kgの人の心臓を移植するイメージです)

2,物理的に壊れる

​​​たとえば、750ccから900ccにボアアップした場合、20%も差があります。

熱量も、パワーも増える分、クランクシャフトにかかる負担も大きくなります。

基本的な話になりますが、純正(ノーマル)のクランクシャフトは、750ccという排気量・出力に対して、必要な強度で設計されています。

バイク製造メーカーで、純正オーバーサイズピストンが設定されている車種であればその分、強度に余裕を持たせて設計されていると思われますが、「ボアアップ」を想定して設計しているわけではないのです。

(一般的に強度を上げれば重量増になりますし、コスト高になります)

どの程度、ボアを大きくするかにもよりますが、大幅なボアアップは、シリンダー・ピストンだけではなく、コンロッド、ヘッドやクランクシャフト、オイルポンプ、オイルクーラー、キャブレターなど、さまざまなパーツを対応させる必要があります。

それでもエンジンの耐久性は落ちますから、ノーマルと比較して、エンジン寿命は短くなります。

 

ノーマルより繊細に扱わなくてはなりません。

いずれも基礎的な知識ですが、ご存じないエンジンチューニング屋さんや、カスタムバイクショップが多いのでしょうか。

「○○さんでエンジンをボアアップしてもらったんですが・・・壊れました」

お問い合せがあって、オーナーさまから話をうかがうと、「壊れるのも無理ないなぁ」というケースがよくあります。

ちなみに、

 

ボアアップに限らず、腰上のみのオーバーホール(シリンダー、ピストン)も、手つかずのへたったクランクシャフトが原因でエンジンが壊れることが多いです。

​* * * * *

長く乗り続けるなら、ボアダウンして純正ピストンを使用するか、最低限のオーバーサイズピストン使用に留めるほうが無難です。

今回はエンジンに特化して話しましたが、大幅な排気量アップはブレーキやシャーシなど、エンジン以外の部分にも影響をおよぼします。

これらをすべて加味した上で、それでもボアアップするのか? あとはオーナーのあなた自身が決めることです。

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