オイル漏れとオイルにじみの違い
絶版車・旧車は、エンジンに歪み(ひずみ)が発生しがちです。
「見た目にはわからない程度に、部品が曲がっている」と思えばイメージしやすいかと思います。
歪みが発生していると、新品のガスケットやゴムシールを使っても、オイルが漏れたり、滲んだりすることがあります。
たとえば、シリンダーヘッドのカバーからオイル漏れするのは、中でカムシャフトが回転しているからです。
カムシャフト(写真下)
カムシャフトが回転すると、風が発生します。
エンジンを高回転まで回せば回すほど、より風は強くなり、オイルをエンジンの外に押し出そうとする力も強くなります。結果、オイル漏れが発生するのです。
イメージとしては、カムシャフトは扇風機のようなものですね。
オイルにじみと、オイル漏れは別物
オイル漏れは、漏れたオイルがタイヤに付着するとか、明らかにエンジンオイルの減る量が多すぎるなど、走行することが危険な状態をいいます。
※あくまで当店の定義です
それに対してオイルにじみは、「走行する上で支障のないレベルのオイル漏れ」です。
オイル漏れや、オイルにじみを完全に止める場合、クランクケースなどを新品交換する事になります。
部品代だけで莫大な費用になりますし、絶版車の場合、そもそも新品のクランクケースが手に入らないため、ケース交換は現実的ではありません。
一般的には、オイル漏れや、オイル滲みを防ぐために液体ガスケットを使用します。
「2、エンジン分解」でお伝えしたように
液体ガスケットを大量に使用してエンジンを組んだ場合、エンジン内部に、液体ガスケットがはみ出て、トラブルを招くおそれがあります。
a.トラブルのリスクを承知で、オイル漏れ(オイル滲み)を止める
b.走行に支障がないレベルであれば、多少のオイル滲みや、オイル漏れは、やむを得ないと考える
当店としては、後者をお勧めしています。
もちろん、オイルの滲みや、オイル漏れが予測される場合、液体ガスケットを使用することもあります。
ただし、当店の方針として極力、液体ガスケットを塗らずに組み上げています。やむなく液体ガスケットを使用する場合は、最小限に留めています。
大事なことは
「オイル漏れ(オイル滲み)=故障」
感覚的にとらえるのではなく、それが物理的に(機械的に)許容範囲なのか、修理が必要なレベルか?
きちんと見極める事だと思います。
メーカーも40年、50年、バイクを使用することを想定して設計してませんので、ガスケット・シール類は当然、経年劣化します。多少のオイル漏れや、オイルの滲みはやむを得ないと思います。
日頃からオイルレベルを確認して、減っていたらオイルを足せばいいわけです。
新しいオイルを継ぎ足すという事は、その分、エンジンの中のオイルが新しくなるという事です。
普段からオイルレベルを確認すれば、オイルやエンジンの状態をつねに把握できます。
もし、オイルが極端に減っていたり(オイルがエンジン内で燃えている)、汚れ具合や、匂い(ガソリンが混ざっていないかどうか)など、なにか異常があれば早い段階で気づくことができます。
たとえオイル漏れしなくても、バイクを良好な状態に保つために日頃の点検は重要です。
それは新車や現行車も同じですし、古いバイクなら尚更です。
ちなみに質の良くないガスケット・シールを使用した場合、オイル漏れが発生しやすくなります。
CB750F/CB900Fのウィークポイント
構造的にオイル漏れが発生しやすいため、特別な加工を施し、対策しました。
オイル漏れしたCB750F
メーター走行距離20,035km。エンジンをオーバーホールしました。(ブログ)